近年、世界のデジタル市場では「ソーシャルメディアとECの融合」が急速に進んでいます。動画視聴からそのまま購買へとつながる新しい消費体験は、従来のオンラインショッピングの概念を塗り替えつつあります。その中心的な存在として存在感を高めているのが、ショート動画プラットフォームとして成長を遂げてきたTikTokです。
TikTokは東南アジアや欧州、米国などでソーシャルコマースを拡大してきましたが、いま新たな戦略市場として日本に照準を合わせています。

日本市場に広がるローカル展開

最近発表された「TikTok Shop Local」は、その象徴的な取り組みです。このプロジェクトは、中小企業や地域商店、さらには伝統産業の商品に新たな販路を提供することを目的としています。動画やライブ配信を通じて商品を発見し、その場で購入できる導線を強化することで、オンラインと地域経済を結びつける仕組みを構築しようとするものです。いわば“ローカル生活圏への本格進出”であり、日本市場に最適化された戦略といえるでしょう。

実際、日本におけるTikTok Shopの拡大は順調です。出店数はすでに5万を超え、クリエイターは20万人以上にのぼります。注文ユーザー数も大幅に増加しています。さらに、月間アクティブユーザーは4,200万人規模に達しており、市場基盤は着実に拡大しています。利用者層も若年層にとどまらず、35歳以上の世代にも広がっており、TikTokはエンターテインメントアプリから総合型プラットフォームへと進化を遂げています。

TikTokが強化する「ソーシャル+EC」戦略

TikTokの強みは、コンテンツと購買体験を自然に接続できる点にあります。ショート動画やライブ配信の中で商品が紹介され、視聴体験の延長線上で購入へと進む。この“ソーシャル+EC”モデルは、従来のECサイトとは異なる熱量と没入感を生み出しています。世界的に広がるソーシャルコマースの潮流の中でも、TikTokはその中心的存在といえるでしょう。

もっとも、EC事業は各国で同じ成功モデルがそのまま通用するわけではありません。東南アジアではライブ販売が定着し、米国ではトップセラー支援策が強化され、欧州では越境と現地運営の融合が進められています。日本では今回のローカル戦略により、地域密着型の展開が加速していくと見られます。さらに、実力ある出店者を支援する大型施策も展開されており、プラットフォーム全体の質を高める取り組みが進行しています。

今後の展望

こうした動きは、単なるEC拡大にとどまりません。地域ブランドの再発見や中小企業のデジタルシフト、そしてクリエイター経済の拡張が同時に進む構造変化といえます。インフルエンサーは広告媒体ではなく、地域と市場をつなぐ経済的ハブとしての役割を担い始めています。

日本市場の成長スピードを踏まえると、TikTokは東南アジアや米国に続く重要市場としての地位を確立していく可能性は十分にあると考えられます。コンテンツとECが融合する新たな購買体験は、私たちの生活圏により深く浸透していくことになりそうです。

当協会としても、この動向を重要な転換点として注視しています。ソーシャルコマースの進化は、クリエイターと企業、そして地域社会を結びつける新たな経済圏の形成を意味します。今後も日本市場における変化を捉えながら、健全で持続可能な流通の仕組みづくりを支援してまいります。
今後も業界動向を継続的に分析し、会員企業およびクリエイターの皆様に有益な情報を発信してまいります。